お客様のご希望
広々した玄関ホールとたくさんある収納を気に入られて築32年の中古マンション購入を決められた施主様。
ドア枠などの木の造作部分がクラシカルで美しく、キッチンや洗面などの水周りも傷みが少なくきれいな状態です。
工務店はお決まりでしたがインテリアコーディネーターがおられなかったため、
「できるだけ既存のものを残しながらおしゃれにしてほしい」「全体的に暗い印象なので、明るい雰囲気にしたい」
と内装と家具のコーディネートをご依頼いただきました。
ご主人様はALSという指定難病にり患されています。
筋肉を動かす神経が障害を受け、体を動かすのに必要な筋肉が徐々にやせていき、力が入らなくなっていく病気です。
進行していく病気に向き合いながらも希望を持ち、周囲への思いやりにあふれたご主人と、ご主人を全力で支える奥様。そして快活なお子様たち。
お話を重ねるうちに「タイムレス」という言葉が浮かびました。「時間の経過に影響されず、常に新鮮さや価値を保ち続け、ご家族の皆さまが安心して帰ることができる場所」を目指して。既存の建具や設備を活かしながら、ご家族の暮らしに寄り添うコーディネートを提案させていただきました。
ご提案
ご主人様の日常生活は介助が必要ですが、手に力が入らず手すりを握ることができないため、一般的なバリアフリー工事ではカバーできない部分がありました。
ご夫妻が同じ病気にり患された方のご自宅を見学された後に再度お話を伺い、ご主人様が希望されていた「介助する方の負担をできるだけ少なくする」ためのリフォームも提案させていただきました。
リビング
「いずれベッドから起きられなくなった時にも家族の様子を眺めていられるように」とリビングと個室をつなげることが、ご主人様の第一のご要望でした。
同じ病気にり患された方の住おまいを見学されたご夫妻のお話をもとに、隣接する旧和室との間に、大きく開口できる引き戸を設けました。
柱と壁の間の隙間を利用して飾り棚を設けました。アーチ形がシンプルな内装のアクセントになっています。
お子様のおもちゃの収納場所も兼ねています。


トイレ


洗面室


ダイニングキッチン
ご夫妻のキッチンのイメージは「イギリスの田舎の家のようなキッチン」。
床をタイル柄のクッションフロアに張り替え、カウンター下の収納扉をツヤ控えめのオフホワイトに塗装してカントリーテイストに仕上げました。

温かく広がる灯りが印象的なガラスのペンダントライトは、ご夫妻がひと目で気に入ってくださいました。
マットな金属シェードのペンダントライトは明るさと色を調節できるので、ダイニングで主に作業をされる奥様に必要な明るさと、夕食時のくつろいだ灯りを切り替えることができます。

キッチン中央にあった食器棚を右側の壁面へ移設。また、吊戸の一部を撤去してオープン棚を取り付けました。
キッチンに光が届くようになり、暗さや圧迫感が解消されたことで、より快適で使いやすい空間に生まれ変わりました。

主寝室

シャンデリアは売主様から譲り受けたもの。上質な木製のドアはタッチアップ塗装のみで現状を維持しました。
子供室


二番目のお子様の部屋は、ご希望の星座が浮かび上がる壁紙を天井に。
事例の掲載にあたりまして快諾くださり、「私の病気のことも書いてくださって構いません」とおっしゃってくださった施主様。
また、打ち合わせの度に「楽しみでなりません」「主人の生きがいになっています」とメッセージをくださり、私自身大いに励まされました。
O様のお心遣いに心より感謝申し上げます。 ありがとうございました。
O様邸の記事は事例からもご覧いただけます